だから介護の仕事は素敵です① ~かつての特技は生きている~
みなさん、こんにちは。
今日もこのブログを見に来て下さり、ありがとうございます。
新型コロナウイルスが世間を騒がし始めてから早4ヶ月。感染予防のためにご家族の面会をご遠慮いただいたり、外出の機会を見合わせたり等、利用者様並びにご家族ご親族の皆様に大変ご迷惑をお掛けする形となり心苦しい限りです。緊急事態宣言が発令された当時よりは新たな感染者の拡大は収まってきているようですが、まだまだ油断はできません。感染予防のために、できる限りの対策を継続してまいりたいと考えております。
さて、今回からは、私が介護職員をしていた頃の経験などを投稿しつつ、「介護という仕事ってこんなに素敵なんですよー」ということをお伝えしていければと思っています。駄文で大変恐縮ですが、お付き合いいただければ幸いでございます。
これは今から20年ほど前の話になります。認知症を患ってみえた男性利用者のM様、身体的にはしっかりとされていたので歩行や食事の動作はご自身でされていたのですが、失見当識でいらっしゃったために、こちらからお伝えする内容をご理解いただけなかったり、援助させていただこうとした時に不機嫌になって拒否をされたり、他の女性利用者様をご自分の配偶者と思い込んでしまわれたりと、認知症の中核症状が目立つ状態でいらっしゃいました。
そんなM様に対し、どんなアプローチをすれば少しでも良いひと時を過ごしていただけるのかを考えていた時に、M様の以前の趣味について調べて、その趣味から関わりを図ってみようと思いつきました。そこで、M様のサービス利用にあたってのアセスメント用紙を改めて見返してみたところ、M様が「将棋がお好きであった」という情報を見付けました。
私は早速M様に将棋をご一緒いただけないかお声掛けをさせていただきました。「ええよ」と快諾して下さったM様としばし将棋をさせていただきましたが、対局中のM様の表情は棋士そのもの。普段接しているM様とは明らかに眼光が異なりました。ルールを忘れてみえないことは勿論のこと、ルールだけ知っている程度の私には理解できないような戦術を使ってみえました。
特別うまくはないものの、私は手を抜いたつもりはありません。それでも勝負が決するまでに大した時間はかかりませんでした。「参りました」と言った私に、M様は「あんたはちょっとはやるかと思ったが、全然ダメだなぁ」と言ってニヤリと笑いました。その自信と誇りに満ち溢れた表情に鳥肌が立つような思いでした。
このように、その利用者様が持っていた趣味や特技を活用することによって、その方が有する能力を引き出すことができ、またそれによってご本人が自信と誇りを感じる瞬間を提供できるのだということを学びました。認知症によりコミュニケーションが困難だと見受けられていても、こちらからのアプローチ次第では、まだまだその方の輝かしい姿を引き出すことができる。これも介護という仕事のおもしろさであり、素敵さを感じるところであると思います。
この将棋をきっかけに、私はM様との距離が近付いたような気がしました。そしてこれ以降、M様が不機嫌になってしまわれた際や介護への拒否が見られる際には、将棋の話題を持ちかけてM様の気分転換を図りながら援助させていただけるようになったのでした。
この度はお読みいただき誠にありがとうございました。
また見にいらして下さいね。
介護老人福祉施設ジョイフル名駅
施設長 原 浩輔