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若手醸造家の「挑戦」×「結実」ワインの匠

社会福祉法人サン・ビジョンでは、長野県塩尻市で地域活性化事業として「サンサンワイナリー」を運営しています。地域の有休耕作地を利用して世界品質のぶどうを栽培、醸造、販売まで行っています。地域の障がい者の皆様にも圃場管理に入っていただくなど、地域を元気にできるサスティナブルなワイナリーをめざしています。今日お届けするのは、ワイン一筋の匠「戸川英夫(ゼネラルマネージャー)」と若手醸造家「田村彰吾(醸造管理責任者)」がつむぐ、ワイン開発物語です。

サンサンエステート柿沢ルージュ プレステージ2018

エステートとは自社圃場で栽培されたブドウを使い、自社醸造によるワインを指します。2018は「プレステージ」が付く数年に一度の良質なブドウを使って醸造され、ソムリエの方も絶賛されるワインとなっています。(わらで燻したカツオのたたきなんか、とてもあいます)

しかし前ヴィンテージの2016は、オフヴィンテージとも言える長雨にたたられて、ブドウにとっては不作の年でした。そこからの開発ストーリーです。長野県に来られる機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。小さなワイナリーならでは、つくり手にあえます!それではどうぞ♪

目次

<若手の挑戦×匠の結実> ~田村彰吾の挑戦~ 

柿沢ルージュ、実は2016年ぶどうにとって不作の年に産声をあげました。ブドウが熟す9月に降水量が400㎜を超え、晴れ間がのぞいた日は2日程、10月上旬にも雨が降りつづく中、ブドウを収穫しなければならない非常に厳しい条件でした。そんな中、師事していた醸造歴54年の匠、戸川英夫から「2016ぶどう醸造、自分でやってみるか」と託されました。当時私は若干26歳。まだまだ経験も浅く(今も)、正直戸惑いもありました。ただワインに向かう想いは人一倍である自負、なにより確かな技術を身につけさせたいとの戸川さんからの信頼を裏切らないためにも全力で取り組もうと決意しました。
「2016ブドウの不作、どうする?」という厳しい状況でのワインづくりが始まります。不健全果は仕込みの際に選果により丁寧に一粒一粒取り除き、ステンレスタンクで発酵後、古樽で熟成させていきました。それでも味わい、色共に深みがもう一つ、何かプラスできないか。当時の私は単一品種によるワインづくりを目指していたため、ブレンドすることは全く考えられませんでした。
ほとほと悩んでいた時、以前からお世話になっていたソムリエの方に「おいしいワインに品種は関係ないよ。」「品種ではなく、塩尻市柿沢という風土を活かしたワインを表現することが一番だと思うよ。」そんな言葉に背中を押され、今までの固定観念の自縛から解かれたようにメルローとシラーのブレンドに踏み出しました。
メルローはしなやかなタンニン(渋み成分)を特徴とし、シラーのスパイシーさをうまく調和するワインをイメージしながら熟成を待ち、ブレンドを何度も繰り返しました。お互いの特徴をうまく引き出し、一つの味にまとまる最善の比率を追い求め、ついに認めていただける仕上がりに到達した時の戸川さんの笑顔は、私の宝物です。オフヴィンテージとも言える2016年のぶどうでしたが、品種ではなく圃場の地名である「柿沢」という冠を表して表現してみようと思い、風土を活かした赤ワイン「柿沢ルージュ」と命名しました。
うまくは言えませんが、失敗や、困難から学ぶことは必ずあると思ってます。そして厳しくも温かく見守っていただき、自分に醸造を任せてくださった戸川ゼネラルマネージャー。「柿沢ルージュ」はサンサンワイナリーの新しい門出であるとともに、醸造家としての一歩を踏み出させてくれたワインです。日本ワインコンクール2019で銀賞受賞も大変光栄でしたが、なにより飲んでいただいた皆様の笑顔がうれしくて、私の原点となっています。
今回、醸造した柿沢ルージュ プレステージ2018は、数年に一度の当たり年。圃場のぶどうも年数を重ねて成木に近づいております。あまりに順調な醸造でしたので、思い返した2016の苦労が正直懐かしいくらいです。
今世界は、多くの自然災害や感染症にご苦労されている方がいて、私も心が痛みます。でもそんな時だからこそ、苦しい時を乗り越えた先に出会うことができた「柿沢ルージュ」を皆様にもお届けさせていただきたい。大事な記念の日や、いつもの食卓、何でもない日常の風景にそっと寄り添うことができたら、幸いです。(醸造管理責任者 田村彰吾)

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